さようなら、サブカル少女。

 特別な人間になりたかった。

 

「今は、ジム・モリスンだとかジャニス・ジョップリンだとか言ってるけれども40越えたら嵐にキャーキャ言うんだよ」

18歳の私のiTunesを見ていた、元オリーブ少女の叔母はこう言った。

 

 容姿、頭脳、共に並み以下。努力が嫌い。それでも、特別になりたかった。

 そんな中、思い付いたのが、お洒落だと思われる映画や音楽や小説を身に付けることだった。知っているだけで、観たと、聞いたと、読んだと、言うだけで自分がお洒落で特別な人間になった気がした。「誰もが知らない、お洒落で素敵な事を私は知っているのよ。」と得意げになった。

 

 それらのカルチャーが好きなのではなく、それらを身につけた自分が好きだったのだ。

 お金が沢山あれば、それらの虚栄心はブランド物で着飾ることで満たされたと思う。

カルチャー達は何も手に入らない、持っていない私を満たしてくれた。

 

 だが、いくら貪り食おうが、自分が素敵になったわけではなかった。

 作品名の羅列、批評めいた言葉、カリスマ性の拝借。披露し合う知識、コピーされた言動、空気感の共有。

 

 特別になりたがる私の悪癖は、今も健在で治りそうにない。困った持病として手元に持ち続ける。

 

 とっくに前に、少女とは言える年齢ではなくなった。さようなら、サブカル少女。

 

おわり。