前衛的になりたい。

 欲しいと思っていたコムデギャルソンの香水を試しに腕に振りかけてみた。直ぐに腕のにおいを嗅ぐと、カレーライスのにおいがしたので、今日の晩御飯はカレーライスにした。食べ終わってしばらくして、腕のにおいを嗅いでみると、乾いた涎のにおいがして、悲しくなった。

 私はカラス族にはなれない。前衛的な女になりたかったのに、生活臭くてかなわない。


 少し前に仲良くしていた男は事あるごとに、「君は家庭的だね。」と言ってきた。私は必死に、自分が家庭的ではない事、男も半分家事をやるべきだと何度もプレゼンしたが、男の意見は変わらなかった。それでも、その男が好きだったので、野暮ったく伸びた髪を好きだと言ってくれたので伸ばし続ける事にし、石鹸のにおいのする香水をふりかけていた。


 プレゼン通り、家庭的でない事が男に伝わった時に、そいつは去っていったので、家庭的に見える要素を無くしてやろうと断髪した。断髪をすれば、大島美幸のような、どっしりしたオカン感が出てきてしまった。無いファッション知識を振り絞り、前衛的なイメージの強いコムデギャルソンの香りを纏おうと思い、デパートへ繰り出した。


 前衛的な香りは、私の体臭と混ざり、腕からはカレーライスのにおいと涎のにおいがして来た。

 

そもそも前衛的ってなんだ?